インフルエンザ influenza
毎年世界各地で大なり小なりインフルエンザウイルスの流行があります。温帯地域より緯度の高い国々での流行は冬季にみられ、北半球では1~2月頃、南半球では7~8月頃が流行のピークです。熱帯・亜熱帯地域では、雨季を中心としてインフルエンザウイルスが発生することが知られています。日本でのインフルエンザウイルスの発生は、毎年11月下旬から12月上旬頃に始まり、翌年の1~3月頃に患者数が増加し、4~5月にかけて減少していくパターンを示しますが、夏季に患者が発生し、インフルエンザウイルスが分離されることもあります。流行の程度とピークの時期はその年によって異なっています。
インフルエンザウイルスにはA,B,Cの3型があり、流行的な広がりを見せるのはA型とB型です。 A型インフルエンザでは、数年から数十年ごとに世界的な大流行が見られますが、これは突然別の亜型のウイルスが出現して、従来の亜型ウイルスにとって代わることによって起こります。1918年にスペインかぜ(H1N1)、1957年にはアジアかぜ(H2N2)、1968年には香港型(H3N2)が出現、ついで1977年にソ連型(H1N1)が加わり、現在はA型であるH3N2とH1N1、およびB型の3種のインフルエンザウイルスが世界中で流行しています。それ以外でも、同一の亜型内の遺伝子に起こる突然変異で、少しずつ変化し毎年のように流行を繰り返します。
インフルエンザウイルスの感染を受けてから1~3日間ほどの潜伏期間の後に、発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状がこれに続き、約1週間程度で軽快します。高齢の方や、年齢を問わず呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者さん、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者さんでは、持病の増悪に加えて、呼吸器症状も出現しやすいです。特に小児では熱性痙攣や気管支喘息を誘発し、急性脳症もときに合併します。
治療に関しては、従来、対症療法が中心でしたが、2001年からノイラミニダーゼ阻害薬が使用され、服用により発熱期間が短かくなります。現行のインフルエンザウイルスワクチンは、不活化ワクチンで効果は100%ではなく、感染や発症そのものを完全には防御できませんが、重症化や合併症の発生を予防する効果は証明されています。
(国立感染症研究所感染症情報センター資料より作成)